9にまつわるある数学(証明編)

前回の記事で紹介した「点の個数・直線の個数が最小の3-配置は9個の点と9本の直線からなる」という主張の証明を書きます。なお3-配置などの用語の定義については適宜前回の記事を参照してください。

まずどんな3-配置においても、そこに現れる点の個数と直線の個数は同じです。これは次のようにすれば分かります。まず3-配置に現れる点と直線に対し、「点 A が直線 a の上に載っている」を満たすような点 A と直線 a のペアを (A, a) のように書いて全て書き出します。ペアの一覧の中に各点はちょうど3回ずつ現れるはずなので、書き出したペアの個数は (点の個数)× 3 個あるはずです。一方でペアの一覧の中に各直線はちょうど3回ずつ現れるはずなので、書き出したペアの個数は(直線の個数)× 3 個あるはずです。ペアの個数が計算方法によって変わるなんてことは起こらないので、(点の個数)× 3 =(ペアの個数)=(直線の個数)× 3 となっている必要があります。従って点の個数と直線の個数は等しくなければなりません。なお、これと同じ議論は1-配置でも2-配置でも、より一般に n-配置( n1 以上の整数)でもできるので、n-配置に現れる点の個数と直線の個数は必ず同じになります。

それでは具体的な議論に移りましょう。まず3-配置には直線が少なくとも1本含まれています。

3-配置の定義からこの直線の上にはちょうど3個の点を置く必要があります(これらの点を A, B, C とします)。

これらの3点のそれぞれについて、今ある直線以外にあと2本ずつその点を通る直線を置く必要があります。

ここまでで置いた直線の本数を数えてみると、ちょうど7本あります。従って、3-配置には直線が7本以上含まれなくてはなりません。上で議論したことと合わせると、3-配置には点も7個以上含まれなくてはなりません

従って、「点の個数・直線の個数が最小の3-配置は9個の点と9本の直線からなる」ということを示すためには次の3つのことを示せば良いです:

  • 9個の点と9本の直線からなる3-配置は存在する

  • 7個の点と7本の直線からなる3-配置は存在しない

  • 8個の点と8本の直線からなる3-配置は存在しない

「9個の点と9本の直線からなる3-配置は存在する」については前回の記事で構成方法を説明したので、この記事では残りのふたつを順番に示していきましょう。

7個の点と7本の直線からなる3-配置は存在しない

(射影変換および実射影平面を知っている人は「余談」を見てください。)

7個の点と7本の直線からなる3-配置を作ろうとしてみます。上で描いた「3個の点と7本の直線からなる図」を思い出しましょう。

この図を念頭に置いて、図の真ん中の点 BB から左上・右上に伸びる2本の直線だけを取り出した図を描いてみます。

この2本の直線にはそれぞれあと2個ずつ、合計4つの AC 以外の点が乗っている必要があります(それぞれ D, EF, G とします)。この4つの点 D, E, F, GB との位置関係は、必要なら回転させたり点の名前の変更を行うことで次の3通りのいずれかだとみなせます:

ここで2本の直線の開き具合の違いは無視しています(開き具合が違っても今後の議論に支障は出ない)。さてまず左の位置関係について考えてみましょう。 A, B, C, D, E, F, G はちょうど7個なのでの、3-配置に現れる点はこれで全てです。ここで A から伸びる直線 AC 以外の2直線について考えましょう。これらの2本の直線は BC も通ることができません(もし B, C のいずれかを通ってしまうとその直線は直線 AC に一致してしまう)。従ってこれらの2直線はどちらも D, E, F, G のうち2つ以上の点を通ります。 C から伸びる直線 AC 以外の2直線についても同様なので、 A または C から伸びる直線 AC 以外の4直線はどれも D, E, F, G のうち2つ以上の点を通ります。一方で D, E, F, G のうち2つ以上の点を通る直線は直線 DE, DF, DG, EF, EG, FG の6本です。

直線 DE, DF, DG, EF, EG, FG の中で直線 DE と直線 FG はすでに B を通っているので AC も通りません(もし AC を通ってしまうと直線 AC と一致してしまう)。従って D, E, F, G のうち2つ以上の点を通る直線であって AC を通りうる直線は直線 DF, DG, EF, EG の4本しかありません。先ほど得た「 A または C から伸びる直線 AC 以外の4直線はどれも D, E, F, G のうち2つ以上の点を通る」という結果と合わせると、次が分かります:A または C から伸びる直線 AC 以外の4直線は直線 DF, DG, EF, EG である。従って特に直線 DF, DG, EF, EG はどれもこの3-配置の一部に含まれる必要があります

ここまでの議論から、直線 DF, DG, EF, EG のうちちょうど2本が A を、残りの2本が C を通るということが分かります。よって A, C はこれらの直線の交点でなくてはなりません。少し考えると A, C は特に DFEG の交点であるか DGEF の交点であるかのどちらかでなくてはならないことも分かります。ひとまず DGEF の交点を ADFEG の交点を C として図を描いてみます( AC を逆にしても以下の議論は同様にできるのでそちらは省略する)。

さてここまでの議論は A, B, C が一直線上に並んでいるという仮定から出発していたのでした。しかしこの図ではそうなっていません。これはこの図がたまたま上手くいかなかったというわけでなく、このような D, E, F, GB の位置関係から始めて図を作ると( D, E, F, G の場所をこの図のような位置関係を保ったままズラしてみたとしても) A, B, C が一直線上に並ぶことはありません。このことは次のようにして分かります。 A, B, C が一直線上に並ぶということはつまり C が直線 AB 上にあるということです。

図の作り方を考えてみると、このような D, E, F, GB の位置関係から始めると点 A は常に次の緑で塗られた領域の内側に含まれることが分かります。このとき直線 AB も緑で塗られた領域に含まれるので、 C もこの緑で塗られた領域の内側にある必要があります

しかし、図の作り方を考えてみると C は緑の領域の外側にしか存在できないことが分かります。従って A, B, C は一直線上に並ぶことはありません。これは A, B, C が一直線上に並んでいるという仮定から考察を始めていたことに矛盾します。

他の2通りの位置関係においても同様に議論を行い同様の図を描くことで同様の矛盾が生じることが分かります。

従って7個の点と7本の直線からなる3-配置は存在しません

8個の点と8本の直線からなる3-配置は存在しない

8個の点と8本の直線からなる3-配置を作ろうとしてみます。「3個の点と7本の直線からなる図」を思い出します。

8個の点と8本の直線からなる3-配置を作ろうとするなら、あともう1本直線を置く必要があります。この新しい直線は、直線 AB と平行である直線 AB と交わるかの大きく2通りの置き方があります。

「新しい直線」が直線 AB と平行な場合

まずこの「新しい直線」が直線 AB と平行な場合を考察します。直線 AB と「新しい直線」だけを取り出して図を描いてみます。

この2本の直線の上に乗っている点はそれぞれ3個ずつあるので、合計6個の点がこれらの直線の上に乗っています(それぞれ A, B, CD, E, F とします)。

「3個の点と7本の直線からなる図」を思い出すと、 A, B, C のいずれかを通る直線は直線 AB 以外にちょうど6本あります。この6本の直線はそれぞれ A, B, C のうちちょうど1個の点を通りまた D, E, F のうち1個以下の点しか通ることができません( A, B, C のうち2個以上の点を通ると直線 AB に一致してしまうし、 D, E, F のうち2個以上の点を通ると直線 DE に一致してしまう)。従ってA, B, C のいずれかを通る直線 AB 以外の6本の直線はそれぞれ A, B, C, D, E, F 以外の点を1個以上通らなくてはなりません

ここでこの3-配置に含まれる点が全部で8個だったことを思い出すと、この3-配置には直線 AB, DE に乗っていない点がちょうど2個含まれます。これらを G, H と呼ぶことにします。すると、A, B, C のいずれかを通る直線 AB 以外の6本の直線はそれぞれ G, H のうち1個以上の点を通らなくてはなりません。一方で3-配置の定義から G, H のいずれかを通る直線は6本以下です。従って G, H のいずれかを通る直線はちょうど6本で、それらは全て A, B, C のいずれか1個のみを通ります。特に直線 GH はこの3-配置には含まれませんG を通る直線も H を通る直線もちょうど3本ずつなので、直線 GH がこの3-配置に含まれたとすると G, H のいずれかを通る直線が合計5本になってしまう)。

ここまでのことをまとめると、次のようになります: G, H のいずれかを通る直線はちょうど6本で、それらは全て A, B, C のうちちょうど1個のみを通り、G, H のうちちょうど1個のみを通る。3-配置の定義からこれらの6本の直線はそれぞれちょうど3点ずつを通る必要があるので、 D, E, F のうちちょうど1個のみを通ることも分かります。

このまとめをさらに書き換えると、 G, H のそれぞれから出る3つの直線は全て直線 AB, DE の両方と交わることおよびそれらの交点は A, B, C, D, E, F のいずれかであること、そして直線 GH は配置に含まれないということが分かったことになります。

さて、 G と直線 AB, DE との位置関係は、必要なら回転させることで次の2通りのいずれかだとみなせます:

G から出る3つの直線は全て直線 AB, DE の両方と交わるので、 G から出る3つの直線と AB, DE との交わり方は次のようになっています。

G から出る3つの直線と直線 AB, DE との交点は A, B, C, D, E, F のいずれかでした。つまり、 A, B, C, D, E, F は次のいずれかの黒い点の位置に置く必要があります。

ここではじめに描いた2本の直線の絵に戻りましょう。

この2本の直線の上にはそれぞれ3個ずつの点 A, B, CD, E, F が乗っているのでした。必要なら点の名前を変更することで、それらは次のような順番に並んでいるとみなせます。

A, B, CD, E, F の順番がこの図と一致する、あるいは回転することによってこの図と一致するように先ほどの図の黒い点の位置に A, B, C, D, E, F を配置するやり方は次で全てです:

この4つの図を観察すると、実は G を通る3つの直線の組の候補は直線 AF, BE, CD の組もしくは直線 AD, BE, CF の組しかないことが分かります。

ここまで G について議論しましたが H についても同様の議論ができるので、 G, H のそれぞれを通る3つの直線の組の候補は直線 AF, BE, CD の組もしくは直線 AD, BE, CF の組しかありません。ここで GH は異なる点なので、結局この両方の組が配置に含まれなくてはなりません。特に直線 BE はこの配置に含まれていて、 GH の両方を通っています。次は直線 AF, BE, CDG を、直線 AD, BE, CFH を通る場合の図です( GH を逆にしてもこの後の議論は変わらない)。

さて直線 BEGH の両方を通っているので直線 BE は直線 GH と一致します。しかし直線 GH はこの3-配置に含まれていないはずなので、これは矛盾です。

従って「「新しい直線」が直線 AB と平行な場合」には8個の点と8本の直線からなる3-配置を作ることはできません

「新しい直線」が直線 AB と交わる場合

(射影変換および実射影平面を知っている人は「余談」を見てください。)

それではもうひとつの可能性である、「新しい直線」が直線 AB と交わる場合を考えましょう。次のような図を描きます(ここで2本の直線の開き具合が違っていてもこの後の議論は同じなので、この図を使って考察して問題ありません)。

「3個の点と7本の直線からなる図」を思い出すと、 A, B, C にはすでにそれぞれちょうど3本の直線が通ってしまっているので、「新しい直線」は A, B, C のいずれも通ることはありません。また直線 AB 上には A, B, C 以外の点を置くことはできないので、直線 AB と「新しい直線」の交点には点を配置できないということが分かります。従って直線 AB と「新しい直線」の上に乗っている点はそれぞれ3個ずつで、合計6個の点がこれらの直線の上に乗っています。これらの点をそれぞれ A, B, CD, E, F として、これらの直線に乗っていない残り2つの点を G, H とすることにします。すると「平行な場合」での議論と同様にして、 G, H のそれぞれから出る3つの直線は全て直線 AB, DE の両方と交わることおよびそれらの交点は A, B, C, D, E, F のいずれかであること、そして直線 GH は配置に含まれないということが分かります。今回の場合特に G, H のそれぞれから出る3つの直線は全て直線 AB, DE の交点を通らないということも分かります。

G と直線 AB, DE との位置関係は、必要なら回転させることで次の図のようになっているとみなせます。

G から出る3つの直線は全て直線 AB, DE の両方と交わりかつ直線 AB, DE の交点を通らないので、 G を通る直線は次の3つのタイプのいずれかになっています:①直線 AB, DE の交点から上に伸びる直線と右に伸びる直線に交わる直線、②直線 AB, DE の交点から上に伸びる直線と左に伸びる直線に交わる直線、③直線 AB, DE の交点から下に伸びる直線と右に伸びる直線に交わる直線。

G を通る3つの直線と直線 AB, DE との交わり方の組は、必要なら回転させたり鏡写しにすることで次の6通りのいずれかだとみなせます:①①①、①①②、①②②、①②③、②②②、②②③。

G から出る3つの直線と直線 AB, DE との交点は A, B, C, D, E, F のいずれかだったので、 A, B, C, D, E, F は次のいずれかの黒い点の位置に置く必要があります。

この6通りの図を観察すると、まず A, B, C, D, E, F と直線 AB, DE の交点との位置関係が、必要なら回転させたり鏡写しにしたり点の名前を変更することで、次の3通りのいずれかになっていることが分かります:

A, B, CD, E, F の順番がこの図と一致する、あるいは回転することによってこの図と一致するように先ほどの図の黒い点の位置に A, B, C, D, E, F を配置するやり方は次で全てです(左の図については4通り、真ん中の図については2通り、右の図については4通り):

これらの図を観察すると、左・真ん中・右の図で表されていた3通りの位置関係のいずれについても、これらの図に現れる G を通る3つの直線の組は直線 AF, BE, CD の組もしくは直線 AD, BE, CF の組の2通りしかないことが分かります。従って3通りのどの位置関係においても G を通る3つの直線の組の候補は直線 AF, BE, CD の組もしくは直線 AD, BE, CF の組しかないことが分かります。

ここまで G について議論しましたが H についても同様の議論ができるので、 G, H のそれぞれを通る3つの直線の組の候補は直線 AF, BE, CD の組もしくは直線 AD, BE, CF の組しかありません。ここで GH は異なる点なので、結局この両方の組がこの3-配置に含まれなくてはなりません。特に直線 BE はこの3-配置に含まれていて、 GH の両方を通っています。直線 BEGH の両方を通っているので直線 GH と一致しており、従って直線 GH はこの3-配置に含まれています。しかし直線 GH はこの3-配置に含まれていないはずだったので、これは矛盾です。

従って「「新しい直線」が直線 AB と交わる場合」にも8個の点と8本の直線からなる3-配置を作ることはできません

よって、8個の点と8本の直線からなる3-配置が存在しないことが分かり、最終的に点の個数・直線の個数が最小の3-配置は9個の点と9本の直線からなるということが分かりました。

余談

射影変換および実射影平面を知っている人向けの注意

普通の平面上での3-配置は、実射影平面から無限遠直線を除いた部分を平面と同一視した後各直線を無限遠直線の部分まで適切に延長することによって、そのまま実射影平面上の3-配置だと思うことができます。射影変換によって共点・共線関係は変わらないので実射影平面上の3-配置を射影変換で写したものはやはり実射影平面上の3-配置になります。このことを用いて考える構図を簡単にすることができます。

7個の点と7本の直線からなる3-配置が存在しないことの証明は次のようにすれば楽に行うことができます。7個の点と7本の直線からなる3-配置を作ろうとしてみます。まず「3個の点と7本の直線からなる図」を描きます。

この図について、直線 AB を無限遠直線に写すような射影変換を適用します*1。この射影変換によって A, B, C は無限遠直線上の点に写され、 A, B, C のいずれかを通る直線 AB 以外の残り2本ずつの直線は射影平面から無限遠直線を除いた部分で見るとそれぞれ平行な2直線のペアに写されます。さらに異なるペアに含まれる直線は無限遠直線上で異なる点と交わっているので、異なるペアに含まれる直線どうしは射影平面から無限遠直線を除いた部分で交わります。無限遠直線上にはすでに3点を置いているので射影平面から無限遠直線を除いた部分に残りの4点を置かなくてはなりません。従ってこの3-配置を射影平面から無限遠直線を除いた部分に制限したものは、平面上の4点と平行な2直線の3ペアの配置であって異なるペアに含まれる直線同士は平行ではないかつ各点を通る直線がちょうど3本になっているものでなくてはなりません。なので平面上でこのような配置を作ることを目標にして図を描いてみます。平面上に平行な2直線を2ペア置いた図を描くと次のようになります。

これらの2ペアは4点で交わります。この後置くことができる直線は平行な2直線1ペアしかないので、この図に現れている交点にしか点を置くことができません(直線が3本以上通りうる場所はこの図ですでに直線が2本以上通っている場所しかない)。一方で配置しようとしている点はちょうど4個あるので、この図に表れている交点全てに点を置かなくてはなりません(これらの点を D, E, F, G とします)。

各点にちょうど3本の直線が通るためには、残りの2直線は直線 DG と直線 EF でなくてはなりません。

しかし、直線 DG と直線 EF は平面上で交わってしまうので、平行にはなりません。これらは平行な2直線のペアになっているはずなのでこれは矛盾です。

8個の点と8本の直線からなる3-配置が存在しないことの証明についても、「新しい直線」が直線 AB と交わる場合の議論をほとんど省略することができます。「新しい直線」が直線 AB と交わる場合について次のような図を考えましょう(ここで2つの直線の開き具合の違いはこの後の議論に影響しません)。

「3個の点と7本の直線からなる図」を思い出すと、 A, B, C にはすでにそれぞれちょうど3本の直線が通ってしまっているので、「新しい直線」は A, B, C のいずれも通ることはありません。また直線 AB 上には A, B, C 以外の点を置くことはできないので、直線 AB と「新しい直線」の交点には点を配置できないということが分かります。従って直線 AB と「新しい直線」の上に乗っている点はそれぞれ3個ずつで、合計6個の点がこれらの直線の上に乗っています(次の図はそのような配置の例です)。

ここで直線 AB と「新しい直線」との交点を無限遠直線上に写し、3-配置に含まれる点を無限遠直線上に写さないような射影変換を行う*2と、直線 AB と「新しい直線」は射影平面から無限遠直線を除いた部分では平行な2直線に写るため、「新しい直線」が直線 AB と平行な場合に議論を帰着することができます。

n-配置」という用語について

本稿での n-配置は [Grünbaum] で(ユークリッド平面で考えた場合の)geometric n-configuration と呼ばれているものに相当します。「配置」という日本語は "configuration" という英語の(執筆者による勝手な)訳で、この訳が本当にふさわしいかどうかは分かりません( [HC] ではコンフィギュラチオンと呼ばれているが、これはおそらくドイツ語 "Konfiguration" の音写)。なお同じく「配置」と訳される語に "arrangement" (例えば "hyperplane arrangement" という用語の訳として「超平面配置」が用いられている)がありますが、 "configuration" と "arrangement" には若干のニュアンスの違いがあるようで、その訳し分けをした方が良いかもしれない……。

参考文献

配置について

[Grünbaum] Branko Grünbaum, Configurations of Points and Lines. Graduate Studies in Mathematics 103. American Mathematical Society, Providence, RI, 2009. ISBN: 978-0-8218-4308-6. URL

配置についての本。今回の記事は主にこの本の1.1〜1.3節と2.0〜2.1節を参考に書きました。今回の記事での「9個の点と9本の直線からなる3-配置」の図は p.6 の Figure 1.1.6 を参考にしました。また「7個の点と7本の直線からなる3-配置が存在しないこと」の証明は p.63 で紹介されているSchröterの議論を、「8個の点と8本の直線からなる3-配置が存在しないこと」の証明は pp.62〜63 の議論を参考にしつつ考えました。

[HC] D. ヒルベルト, S. コーン゠フォッセン(著), 芹沢 正三(訳), 直観幾何学, 新装版. みすず書房. 2019.(初版は1966年)ISBN: 978-4-622-08828-8. URL

(David Hilbert, Stefan Cohn-Vossen, Anschauliche Geometrie. Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 37. Springer-Verlag Berlin, Heidelberg, 1932. ISBN: 978-3-662-35855-9. URL の和訳)

図を描くなどの「直観的」な議論によって色々な幾何学を紹介する本。3章の射影幾何についての章が配置(この本では「コンフィギュラチオン」と呼ばれている)の考察に充てられていて、特に15〜17節で7〜9個の点と7〜9本の直線からなる3-配置が扱われています。配置について日本語で読める本はもしかするとこの本しかないかも……?ただ翻訳がちょっと読みにくい(数十年前の訳なので仕方ないが……)し議論も射影幾何に寄っているので、配置について勉強するなら [Grünbaum] の方が良さげな感じがします。

射影変換について

[西山] 西山 享, 射影幾何学の考え方. 数学のかんどころ 19. 共立出版, 2013. ISBN: 978-4-320-11061-8. URL

射影幾何についての本。特に3章・4章で実射影平面や射影変換の性質が紹介されています。

*1:実射影平面上の任意の2直線 l, m について、 lm に写すような射影変換はいつでも存在する( [西山] p.95 の定理 3.14)。

*2:3-配置に含まれる点は有限個なので、直線 AB と「新しい直線」との交点を通り3-配置に含まれるどの点も通らないような実射影平面上の直線が存在する。この直線を無限遠直線に写すような射影変換はここで要求している性質を満たす射影変換になっている。